友人のMに、ある会合で会ったところ、彼は、「どうも忙しくて読書する暇もないんだよ。そこへいくと君はいいね、自由なんだから、羨ましいよ」といっていた。
食品会社に勤めているSという青年も、「どうも忙しくて、勉強する暇もないのです」とこぼしていた。
忙しくて暇がないというのが、現代ビジネスマンに共通の悩みらしい。
しかし、ほんとうに、それほど忙しいのだろうか?
忙しい忙しいといいながら、その日の終わりに、さて、きょうは何をしたのだろうかと振り返ってみると、仕事らしいことは何もしていないということが多いのではなかろうか。
こう考えると、現代のビジネスマンは、時間を無駄に使っているということになる。
会議とか打ち合わせとかいうことに必要以上の時間を費やしたり、どうでもよい雑用にかけずりまわったり、つまらない問題で口角泡を飛ばして議論したり、面会に無用な時間を費やしたりしていることが多いのではあるまいか。
もし、忙しすぎて暇がないと思ったなら、ほんとうに必要で費やした時間は何時間であるかを計算してみるがよい。
そうすれば、一時間ですむ会議に二時間かけていることや10分ですむ面会に30分費やしていることもわかってくる。
つまり、忙しくてヒマがないということは、無計画にことを進めていることである。
計画的にことを進めれば、どんなに忙しくても、かなりの時間的ゆとりができるものである。
第二に、仕事のやり方がへたなのではないか考えてみることである。
ちょっと工夫すれば10分で片付くものに、30分もかけているということがないか。
また、あっちの仕事を半分やり、こっちの仕事を半分やるというように、どれにも手をつけ、生かじりにするため、余計な時間をかけていることがないかを反省してみることである。
第三に、すぐにやっておけばよいものを、ほったらかしておくために、いざというときに、後手後手とまわり、仕事に追いまわされているのではないか。
第四に、暇がないといいながら怠けて仕事を溜めるために、それをもてあまし、忙しがっているのではないか。
こういう人は、周囲の人たちとテンポを合わせるために、土壇場にきてキリキリ舞いをし、忙しすぎるとこぼすのである。
このように、暇の先取りをして忙しいというのは、身勝手といわなければならない。
第五に、欲張りで、どれもこれも仕事をかかえ込み、自分で仕事をたくさんつくって、忙しがっていることはないか。
第六に、職場の周囲の人たちが忙しそうに立ちまわっているので、その雰囲気に巻き込まれ、気分的に忙しがっていることがないか。
第七に、じっとしていられない性質で、せかせか動きまわっていなければ気がすまないということがないか。
こういう人は、ただ、忙しい忙しいといっているだけで、ろくな仕事はしていないことが多い。
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忙しくて暇がないということには、このように、無計画、仕事の処理べた、欲張り、気分的忙しがり屋など、さまざまな原因があるので、これらのことがらを反省し、それを改めることによって、暇をつくることができるのである。
人の顔さえみれば、忙しい忙しいと口癖のようにいうようであっては、一人前のビジネスマンとはいえない。
いまの時代に、暇で困るというようなビジネスマンはいない、忙しいのはみんな同じなのである。
忙しい中で暇をつくることができるのが優秀なビジネスマンであり、忙しくても気分だけはゆとりをもって人に接することができるのが、評価されるビジネスマンなのである。