人が怖いを解消する食事
食べ物の組み合わせも、脳内での人が怖いという気持ちが改善されるセロトニン合成に重要です。
食物から摂取されたトリプトファンが、血液を介して脳内へと入りやすくするには、炭水化物中心の食事がよいとされます。
食物にタンパク質が多く含まれますと、トリプトファンの脳内への取り込みが悪くなることが分かっています。
したがって、お米、麺類、パンなどの炭水化物中心の食事が、脳内セロトニン濃度を高めるには好都合なのです。
興味深いことに、同じような考え方が、マラソン時の食事指導にも見られます。
マラソン選手の中には、試合前にカーボローディングといって、炭水化物中心の食事に切り替える人が多くいます。
セロトニン神経はリズム運動で活性化されるわけですが、マラソンの場合にはリズム運動が長期にわたりますから、セロトニン神経にとってはかなりの負担になります。
鍛えるというより、酷使されるといってよいでしょう。
脳内のセロトニン合成を効率よく行わせ、なおかつ、脳内のセロトニンレベルを高く維持させるために、炭水化物中心の食事と、トリプトファンを多く含むバナナなどの摂食が、大切ということになります。
また、禅寺での食事は、よく知られているように、動物性タンパク質を摂らないことが原則になっています。
これも、脳内でのセロトニン合成を効率よく行わせます。
坐禅修行はセロトニン神経を徹底的にきたえるという側面があると考えられますので、肉を摂取しない食事は、セロトニン合成を促進させるという意味で、科学的根拠を有するのです。
長い歴史と経験に培われた伝統食には、改めて感心させられるばかりです。
いずれにせよ、セロトニン神経を鍛えよう、あるいは活性化しようとする人には、トリプトファンを豊富に含む食材と炭水化物中心の食事がおすすめ、ということになります。
サプリメントには手を出さない
今の世の中、サプリメントが大流行です。
セロトニン合成に直接かかわる物質(セロトニン前駆物質)を錠剤で摂取すれば、手軽にセロトニン神経がきたえられるのではないか、と短絡的に考える人たちがいます。
これは完全な誤解です。
サプリメントだけでは人が怖いという気持ちを解消させることは難しいです。
普通の食事の中に含まれるトリプトファンで、通常の必要量は十分に足りています。
バランスのよい食事さえしていれば、不足することはけっしてありません。
余った分は、排泄されるだけです。
セロトニン神経をきたえるのは、リズム運動や光であって、食物は二次的な役割しか果たしません。
トリプトファンは、リズム運動や光が十分にあってはじめて意味を持ってきます。
部屋に閉じこもってゲーム三昧、しかも昼夜逆転という生活を送っていては、いくらトリプトファンやセロトニン前駆物質を摂っても、セロトニン神経には毒にこそなれ、役には立ちません。
しかも、セロトニン前駆物質をサプリメントで大量に摂取すると、恐ろしい副作用が現れます。
動物実験でセロトニン前駆物質を大量に投与しますと、セロトニン症候群という症状が現れます。
高熱を発し、ときにけいれんが起こり、睡眠・覚醒障害が起こります。
サプリメントには手を出さないのが賢明です。