ドパミン神経が脚光を浴びるきっかけになった興味深い実験が、50年ほど前に報告されています。
ラットの脳内に刺激電極を埋め込んでおいて、その刺激をラット自身が勝手に得られるように、飼育ケージにレバーをセットしておくのです。
これは、自己刺激実験といって非常に有名な実験です。
刺激部位が不快感を催すのであれば、ラットは二度とレバーを押して自己刺激することはありません。
しかし、刺激部位をいろいろに変えて調べていくうちに、ラットが何百回となく、繰り返し自己刺激する部位が発見されました。
それはラットに快の情動を誘発し、好ましい刺激を与えていると判断されました。
自己刺激の部位は一定の広がりがあり、快の情動回路とか報酬システムと呼ばれます。
この神経回路の要となる神経が、中脳の腹側被蓋野にあるドパミン神経です。
ドパミン神経については、パーキンソン病との関係があることをご存知の方もいるかもしれませんが、それとは違う場所に位置するドパミン神経です。
このドパミン神経の軸索は、大脳の前頭前野や大脳辺縁系など、心や感情、人付き合いの怖さ、と密接に関連する脳領域に伸びています。
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性や食など、生存には不可欠の本能行動に関わっています。
異性を求める心、うまいものを食べたいと思う心を作り出します。
そこを刺激すると、性や食に伴う快感や、好ましい感情が誘発されます。
ラットが繰り返し自己刺激するのも肯けます。