結婚生活がうまくいかない妻とカウンセラーのやりとりである。
妻「彼、大嫌い。でも、嫌うなんてよくないことよ。だから今日、こうして相談に来たのです。自分の亭主を憎んだりしたくありませんもの」
カウンセラー「彼、ここへ来ると思う?」
「ええ、一度は来るでしょう。おそらく何も問題はないって言うでしょうけど。私が文句を言うのを止めればいいのにって」
「止められる?」
「たぶん。でも、そんなことしたら、私、自分の要求を何も通せなくなるわ」
「こんなやり方で要求を通すの楽しい?」
「楽しかったら、相談なんかに来ませんよ」彼女は、彼女なりの結論に達した。
「そう、こんな無駄な騒動は止めたほうがいいね。でも、あなたがピタリと文句を言うのを止めたら、今度はマークが自分の問題に取り組まなくてはならなくなるわけだ」
「そうなったら、私は何をしたらいいのかしら」
「母親ぶるのを止めること。彼が抱えている問題をあなたが心配することも、自分を責めることも止めること。彼のマッチョぶったショービニズムにも動じないこと」
「彼の何ですって?彼がショービニスト(男尊女卑論者)だなんて、思ってもみませんでしたが」
「たぶん、以前は見せないようにしていたのでしょう。しかし、彼のいまの状態を、他に何と呼んだらいいと思う?
彼の行動基準には男性用、女性用、いつも二通りあるし、とても冷酷で、差別意識まる出しですよ。
あなたに役目を押し付け、ワーカホリックになって、あなたより偉いんだと見せつけたり。友達とビールを飲んで騒いでいる間、あなたを家にしばりつけておこうとしているではありませんか」
「ほんと、そう言っていただくと、ずいぶんひどい話だわ」
「夫のマークには、まだ私の知らない優れた点がきっとあると思いますよ。でも、彼のショービニズムは気に入りませんね。ちょっと手荒なやり方だが、やっぱり彼にこのことをわからせないといけない。マークが私の話を少し聞いてくれたら、これ以上、悪くなる前に食い止めることができると思いますよ。
そうなったら、あなたも彼を助けてあげることができるでしょうしね」
「人付き合いの怖い私が?」
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「ええそうです。しかし、彼のママになってはいけません。罪悪感でコチコチのダメな女の子になってもいけません。しっかり希望と夢を持って、彼のショービニズムに屈服しないことです。マークを愛しているのなら、できるだけのことをするまで諦めるのは待ってごらんなさい」
「でも、もし彼が二度目から来なくなったら?」
「そうですね、だとしたらどうする?」
「そうなったら、彼をもっともっと愛するわ。まだ数ヵ月なんですもの。昔のようになるチャンスはこの先いくらでもありますよね」
「さあ、それはむずかしいかもね。それより、あなたが自分の気持ちにもっと正直になるほうがいいと思いますがね」
相談者のジェニファーは席を立ち、二、三歩歩いてからドアのところで振り返って言った。
「お願いですから、彼を傷つけないで」
カウンセラーは微笑んで、「はい、お母さん」と言って、ウインクした。
彼女はドッと笑いだした。
「あら、わたし、またやってしまったのね」
カウンセラーは、はげますように「そんなに自分を責めないで、ジェニファー。愛情を信じて、そのとおりにしたらいいのですよ。いつかかならず、あなたの愛情がショービニズムをやっつける日が来ますよ」と応えた。