人付き合いに悩むランディとカウンセラーのやり取りとりである。
ランディ「女性を愛せないからだと思うよ。本当にできない。だから、こうなるより仕方ないのさ」
カウンセラー「女性を愛せないだなんて、言っちゃだめだ。それは間違いだ。できるんだけど、問題はキミが彼女たちに愛されるのを嫌がっていることだよ。それなのにキミは、自分が愛せないと思っている。それより、キミが彼女たちにとって、もっと親しみやすい男になるのが早道だ。まるでキミは、自分からつくり出した孤独という名の牢屋に閉じ込められているみたいだ。キミが、うすっぺらな女の子たちの褒め言葉で傷ついた自我をマッサージしてもらいたがっている間は、とてもそこから逃げ出すわけにいかないな」
ランディは、この私の厳しい現実直視を結構、楽しんでさえいる様子だった。
彼に本当のことを伝えることこそ、最大の治療なのだ。
ランディは、しばらく沈黙していた。
そしてこの、とりわけ実りのある面接の締めくくりとして、これからどうしたよいかに目を向けて、彼はカウンセラーにこう尋ねた。
「抜け出す方法はないもんでしょうか?」
そうだ。これから何週間も、ランディの心の苦悩の原因と処方を、二人で一緒にもっと考えていかなくてはならない。
彼の怠惰やだらしなさ、傷ついたプライド、それに躾のなさなどについて。
どうして彼が父親と疎遠になってしまったのか、そのわけや、母親に対する怒りと罪悪感の混ざり合った複雑な気持ちについても、徹底的に理解しなければ。
そして、彼のあの無責任さも!
もし、人付き合いが怖いランディがいままで自分の問題に対峙するのを避けるために費やしてきたその半分の時間だけでも、問題解決に使ったら、いまのこの生活態度から抜け出すのも遠い先のことではない。
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すでにランディのピーターパンシンドロームは、危険段階にまで進行している。
まさに彼は、絶望と希望の相半ばする事態に直面している。
完全さを求めるという幻想を支えていた鏡が割れ、ショービニズムの荒っぽさが、対人関係で残酷なまでに冷ややかな態度を取らせる。
これが、絶望的な見通しの理由である。
しかし、まだこの危機の段階においてすら、これまでランディについて見てきたように、それまでの生活の決定的な転換をはかるチャンスは残されている。
これが希望的な見通しの根拠である。
専門家であるにせよ、友人であるにせよ、この危機にあるピーターパン人間に、誰かがよき助けを与えるなら、彼らは「ないない島」から脱出する最初の、しかも、とても重要なステップを踏み出すことができるにちがいない。